働くと損? 課税の境界線
日本の所得税は、累進課税という税率方式を取っています。所得が多い人ほど高い税率となって多くの税金を支払い、所得が少ない人ほど、税率が低くなるという事です。この所得税率は段階的に決められていますから、収入がこの、所得税率の境界線付近にある人は、少ない税率のほうが得をすることになる、そういわれることもあります。実際に収入を抑えたほうが、所得税で得をすることがあるのか考えて見ましょう。まず、今現在所得額が195万円以下の人は、所得税は課税額の5%になっています。そして195万円を超える人は10%です。195万円の所得がある人は5%の9.75万円が所得税となります。そして196万円の所得がある人は10%ですから、19.6万円が所得税になります。所得が1万円違うだけで、収めなければいけない、税金に10万円近く差が出るのだとしたら、確かに「働かないほうが特になる」ということになります。ですが、もちろんそんなことはあり得ません。なぜなら、税率が上がるごとに、控除率も高くなっているからです。196万円の所得がある人は、19.6万円から、9.75万円を差し引いた金額が、実際に収める所得税になります。ですから、1万円の収入の差では、課税額は千円の差しかないということになります。195万円超・330万円以下の所得がある人は、20%マイナス9.75万円、330万円・695万円以下の人は23%マイナス42.75万円が課税されます。330万円の所得がある人は、66万円マイナス9.75万円で56.25万円、331万円の所得がある人は76.13万円マイナス33.38万円になります。つまり、課税率が変わる境界線上付近の所得の場合、働かないほうが得というのは、ウソだということがわかります。