節税と脱税の境界線
節税対策と脱税、その違いはもちろん犯罪か合法かということです。そしてその中間に位置するものというのが、租税回避ということになります。租税回避は、あくまでも合法ではありますが、法の抜け道をついた方法で、税金を回避、または軽減しようとする行為の事です。グレーゾーンに当たる行為であれば、後に課税対象とされることもあり、税金を減らすつもりが、逆に税金の負担が増えてしまうこともあります。この租税回避は、法の抜け道を付いた合法的な節税としてバブル期に大いに流行ったものです。ですが税務署もばかではありませんから、こうした抜け道を塞ぐために、何度も法改正がなされてきました。このため、租税回避は永く使える節税方法とはいえず、また極端な租税回避は、起業のモラル、信頼を損ねる事態にもなりかねません。
タックス・ヘイヴン(日本では法人税の実効税率が20%以下の国や地域をタックス・ヘイヴンと認定しています)を利用して、日本の大企業が数十億円の利益がありながらも、1半期分1円の税金も納めていなかったことがありました。また最近は、アメリカ国内での納税比率に比べ、日本では極端に納税比率が低い大企業や、グローバル展開している企業の売り上げから見て納税額が少なく、年によっては赤字決算だったこともあります。こうした租税回避行為は、インターネットの普及で、ネットユーザーに一気に拡散し、不買運動が起こることもあります。実際に違法な手段で脱税した場合だけではなく、グレーゾーンを上手く活用して法の目をかいくぐるような租税回避行為は、その企業を外から眺めた場合には、「ずる」をしているようにしか見えません。不公平だという批判が出れば、少なからず信用という大事なものを失うことにも繋がりかねません。租税回避は、合法的でありながら、正当な税金を納めていないというイメージの納税方法ということになりますね。
また、税金を納めなかった場合、故意におこなった脱税なのか、経理上のミスでたまたま発生した申告漏れなのかでも、深刻さが変わります。申告漏れも違法には違いないのですが、脱税という犯罪とは分けられて考えられています。ミスでの申告漏れになれば、追徴課税は10%、故意に行った脱税は40%の重加算税になり、それと延滞税が、過去に遡って適用されることになります。ではどうやってミスだったのか故意だったのかを判断するのか、というと実は明確な基準はなく、税務署の心証で判断されることになります。例えばの話ですが、総資産額が100万円ほどの人が1,000万円の贈与を受けた場合、納税しなければ間違いなく脱税とされるでしょうが、総資産が100億ある人が1,000万円ある人が1,000万円の贈与を申告しなくても、その程度のはした金を申告し忘れるというのは、きっと申告漏れだろうと思われるのです。同じ金額を申告しなかったとしても、脱税か申告漏れか、判断が違ってしまうということになります。